Heart Of Steel

買ったアルバムの感想を語る場

FLEETWOODMAC

「メタルファンは、死ぬまでメタルファンなんだ。パーマネントに『あ~○○年の夏はSLAYERをよく聴いたよな~』みたいな聴き方をする奴は一人もいないよ」byロブ・ゾンビ

【レビュー】LINDSEY BUCKINGHAM & CHRISTINE McVIE "Lindsey Buckingham & Christine McVie"

FLEETWOOD MAC関連のリイシューが続いたこの1年間、その最後を?締めるのは予想もしなかったデュオ名義の新作だった。そのFLEETWOOD MACのメインソングライター兼ボーカリストといえばご存知、リンジー・バッキンガム、クリスティン・マクヴィー、そしてスティーヴィー・ニックスの3人。そのうちのリンジー・バッキンガムとクリスティン・マクヴィーの二人がタッグを組み、この二人名義(LINDSEY BUCKINGHAM & CHRISTINE McVIE)のセルフタイトルアルバムをリリース。
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そして、よくよくクレジットを見ると、ドラムにはミック・フリートウッド、ベースにジョン・マクヴィーと来たら、これはスティーヴィー・ニックス抜きのFLEETWOOD MACじゃないか!(笑)音楽性もデュオ名義となったからといって、特別に変わったことをするわけでもないから、FLEETWOOD MACの新作といっても差し支えないほど。
ライナーノーツにはなぜ、わざわざデュオ名義で新作を作った経緯が書いてあるけど、2014年にクリスティンがバンドに戻ってのワールドツアー後にFLEETWOOD MACの新作を製作する予定だったものの、スティーヴィーがソロアルバムのツアーに出てしまったものだから、残った4人で作ったのがこのアルバムらしい。

全10曲、リンジーとクリスティンがリードボーカルを取る曲が 交互に流れる構成にこのアルバム製作の充実さが表れているように思えるけど、内容も単に大ベテランバンドが新作出しました〜的なものではなく、過去の名作にも負けない充実っぷりにビックリ。

1曲目の"Sleeping Around The Corner"はリンジーのソロ曲をリメイクしたものだが、2曲目の" Feel About You"はFLEETWOOD MACの"Tango In The Night"に収録されていてもおかしくない曲。イントロのキーボードは正にこうしたサウンドを待っていたんだよ!と思わず言いたくなる音で二人のポップセンスに衰えは見られない。
 


そして3曲目の"In My World"は同じく "Tango In The Night"からの"Big Love"を彷彿とする曲だが、思わず「オオッ・・」と感嘆の声を出してしまったぐらい、リンジーのギターワークとサビがとっても印象的で、個人的にこのアルバムのキーとなる曲。正にFLEETWOOD MACならではの万華鏡的なサウンドがここに復活!


その分、逆にスティーヴィー・ニックスのコーラスがここに入っていればなぁ〜と思う箇所も沢山ある(笑)やっぱりリンジー、クリスティン、そしてスティーヴィーの3人が揃っていないとFLEETWOOD MACとは言えないことはバンド自身もわかっているから、あえてディオ名義としているかもしれない。 


こうした、いかにもFLEETWOOD MACな曲もあれば、"Too Far Gone"といったモダンな感覚が入った曲もあり、単に大ベテランの懐古趣味的なアルバムと言えないところがこのアルバムのもう一つのミソだと思う。グルーヴィーでノリノリなナンバーが嬉しい。


全10曲、グッと中身が詰まったアルバムだし、ちょくちょくソロアルバムを出していたリンジーはともかく、久々に新曲を出したクリスティンのソングライティング能力とボーカルに衰えが見られないのは本当に凄い!特に最後を締める"Carnival Begin"はクリスティンらしい名曲だと思う。

FLEETWOOD MAC自体は7月16日に"The Classics"という豪華フェスの二日目のトリを努めていたけど、(この日の前座がEARTH,WIND & FIREとJOURNEY!)このアルバムの勢いに乗って、今度こそはFLEETWOOD MACとしてアルバムを製作してほしいなぁ〜。やっぱりキーはソロキャリアを充実させたいスティーヴィー・ニックス!?

The Classicsのセトリはとっても充実しているからタイミングが合えばいつかFLEETWOOD MACの新作が出る日は再びくるか!?みんな歳なんだから、作れる時には作ってほしいと切に願う!


 
リンジー・バッキンガム/クリスティン・マクヴィー<SHM-CD>
リンジー・バッキンガム クリスティン・マクヴィー
ワーナーミュージック・ジャパン
2017-07-19

【レビュー】FLEETWOOD MAC "Tango In The Night"(2017年リマスター盤 Expanded Edition)

ここ1年間のFLEETWOOD MAC関連のリイシュー攻勢が凄い。去年は”Mirage”のリマスター盤がリリースされ、続いてSTEVIE NICKSのソロアルバム2枚も初のリマスター盤として発売。今年は初CD化となるBUCKINGHAM / NICKSと来て、そして、極めつけはFLEETWOOD MAC”Tango In The Night”が「初」リマスター盤で登場!!オイオイ、この攻勢はもしかして来日ある?(ありません苦笑)
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後追いFLEETWOOD MACファンでありながらも、この”Tango In The Night”には手を出しておらず、理由はリマスター盤が出るのをずっと待っていたから!(笑)だから、こうしてリマスター盤を手にすることができたので、私も堂々と語れるぞ!(笑)FLEETWOOD MACの万華鏡的なきらびやかさが80年代的サウンドで更に磨かれ、色々意味で今までのFLEETWOOD MACのアルバムとは異なり、彼らのアルバムの中でも特にユニークな一枚という印象!


ユニークと感じたのは、先程のサウンド面でもそうだが、歌メロが80'sしているのが多い印象!特にそれが際立っているのが"Isn't Midnight"。今までのクリスティン・マカヴィーの曲は牧歌的なものが多かったが、これは80'sハードポップでビックリ。個人的にとっても好きな曲ですけどね。
 

そして、やっぱり一番目立っているのがリンジー・バッキンガム。ギタープレイ・ボーカルもそうだけど、プロデュースも担って孤軍奮闘?1曲目の"Big Love"のギターワークはやっぱり非凡なものを感じるし、彼のギターが今まで一番目立っているかも。


どうやら、当初はリンジーのソロアルバムとして作っていたが、そのうちFLEETWOOD MACとして・・となったようだからそれも納得。そんな背景も踏まえて、今までのアルバムと同様、リンジー、クリスティン、そしてスティーヴィー・ニックスが受け持つ楽曲数比率に大きな変化は無いが、このアルバムはリンジーとクリスティンの印象が強くて、逆にスティーヴィーの影が薄く感じてしまう。
スティーヴィー・ニックスがメインボーカルの"Seven Wonders"は名曲だけど、スティーヴィーのソロという印象が強い曲だし、同様にメインボーカルの"Welcome To The Room...Sara"はあのSaraの名前が出て来る曲だが、後のスティーヴィーのソロで出てくる"Rooms On Fire""If Anyone Falls In Love"の原型のような曲でFLEETWOOD MACと少し距離を取っているようにも思える。

"Seven Wonders"


ライナーノーツを読むと、スティーヴィーの当時のクスリの問題や、この"Tango In The Night"はリンジーの自宅でレコーディングしていたため(しかもボーカルはリンジーの寝室でレコーディング!(^O^;))、製作に1年を費やした中でスティーヴィーが出てきたのは2週間のみだったようで。ライナーノーツのスティーヴィーの言葉として印象的だったのはちょっと載せてみる。

「Tango In The Nightは大好きなアルバムよ。ある程度客観的な視点から言えるわ。実際のところ、私はほとんどその場にいなかったから」
「さらに話を複雑にしたのはTango In The Nightをリンジーの自宅で作ったことだった。彼のガールフレンドがいて、私がその場にいるのは奇妙な感じだった。ボーカルは文字通り彼らの寝室でレコーディングしたもので、そのとき頭がボンヤリしていた私ですら、これは変だと気付いた」

そんな状況下で製作したのにも関わらず、認めるべきものは認めるプロフェッショナルな姿勢はさすがですね。3人のうちどちらかがリードボーカルを取っても、残り二人が存在感があって、なおかつ曲の一部として完全に機能しているコーラスワークはFLEETWOOD MACならでは!そういう意味ではクリスティンがリードボーカルの"Little Lies"はその代表的な曲かも。リンジーとスティーヴィーのバックボーカルが無いとこの曲は成立しないぐらい見事ですし。

"Little Lies"


相変わらず一筋縄ではいかないバンド事情にも関わらず、結果的にリンジーが製作の音頭を取ったこともあって、今までのアルバムの中で非常にまとまりがあって、隙が無いアルバムだから、帯の「噂」を超えてという煽り文句もウソじゃないかも!しかし、制作後、バンドから脱退してしまったのは、なんたる皮肉というかべきか。その辺の詳しい内容はライナーノーツに詳しく書いてあるけど、このライナーノーツも読み応えがある。FLEETWOOD MACって、ほんと、ソープオペラなエピソードが事欠かないバンドだよなぁ。。

さて、肝心なリマスターとしては最近の傾向に倣って音圧を控え目にし、その分、アンプのボリュームノブをグッと廻しても音の幅に余地があるタイプ。この時代ならでは抜けの良い音と相まって、いいリマスターなんじゃないかと!
そして、Expanded Editionのディスク2枚目はデモ音源やB面曲集。デモ音源は80年代的な装飾を施す前なので、Lawな味わいがなかなか興味深い。その中で、おや?と気になったのは"Ooh My Love"のデモバージョン。スティーヴィー・ニックスファンだったら、"Ooh My Love"は彼女のソロ"The Other Side Of The Mirror"に収録されている曲だが、このデモは全くの別物。・・・と思ったらテンポとサビ部分はまるで違えども、歌詞と歌メロは同じ!(正確には最初のヴァースだけですが)結局、この曲は本編に採用されなかったので、スティーヴィーが自分のソロとして完成させたってことですかね?

スティーヴィー・ニックスの"Ooh My Love"


他には本編ラストを飾る"You And I, Part II"のフルバージョン、"You And I Part I & II"も収録。Part Iはどこいったんだ!というツッコミに対して、応えてくれている内容ですが、結局、Part Iの部分はイントロのようなもんなんで、本編がPart IIだけにしたのは正解だったかも(笑)そんな視点からでも楽しめるExpanded Editionということで、ファンならせめてExpanded Editionのがいいのかも!?

これで一連のFLEETWOOD MACのリイシュー攻勢は落ち着きますかね。Stevie Nicksのソロリイシューは2ndアルバムで止まっているので、3枚目以降も再開してほしいなぁ。


タンゴ・イン・ザ・ナイト エクスパンデッド・エディション<SHM-CD>
フリートウッド・マック
ワーナーミュージック・ジャパン
2017-05-24

 

プロフィール

sekibow

熱苦しいハードロック、ヘヴィメタル、スラッシュメタル、ドゥーム・ストーナー系メタル、プログレ、そして70年代〜80年代のウエストコースト系ロックを愛するパフュメタラー。Sign of the Hammer Be My Guide

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