2023年ももう少しで終わりということで、2023年にリリースされた新譜で個人的によく聴いてお気に入りとなったアルバム10枚+αについて語ってみます。
ピックアップするのはライブアルバム、EP、再録アルバムは除く純粋な新譜のみ!
まずは10位〜1位をどうぞ。
10.RIVERSIDE "ID.Entity"
ポーランドのプログバンドの8作目となる5年振りとなるアルバム。私は前作の"Wasteland"から聴き始めたが、その時はまあまあかな・・という印象。しかし、今作は大きくパワーアップした印象を受け、お気に入りの1枚となった。
PINK FLOYDに通じるスペーシーなところにメタルがバックグラウンドの一つにあると思わしき、各楽器のナチュラルなヘヴィな感覚に時折レトロな音像が入る、他の現代プログバンドと共通点はあるけど、どこか違う雰囲気がある、そんな感触を受けた中でフック満載な展開は思わず耳を音に傾けてしまう。Blu-ray Auido付属盤を買ったが、5.1chミックスはパンチが足りなくてそこは残念(笑)
9.URIAH HEEP "Chaos & Color"
イギリスの超ベテランバンドの新作。オリメンはギターのミック・ボックスしか残っていないが、それでも現編成の中心メンバーは在籍してからもう36年も経っており、そして、常に最新作が過去の名作に負けず劣らずの内容をキープしているのは驚異的の一言。ギターとキーボードがバランスよく主旋律を奏でて、バーニー・ショウの英国的な響きたっぷりのボーカルがそれに乗るブリティッシュハードロックっぷりは不変だが、とにかくフック満載の曲が多くて、ハードロックのカッコよさと渋みを同時に味わえるが、若手に負けないパワーを感じるところに彼等にとって、引退の二文字はまだまだ先のようだ。
8.WINGER "Seven"
9年振りとなる通算7枚目のアルバム。ライブはコンスタントにやっていたが、アルバム製作となると各メンバーのタイミング云々等で、ファンとしては非常に待たされていたが、長い間、待った甲斐があった内容と言えるのではないだろうか。
今作でポール・テイラーが正式にメンバーに復帰しているが、そのポールがギターソロを担当する曲や、レブ・ビーチがリードボーカルを歌うパートがあるなど細かな変化もありつつも、今作は今まで最もスケールの大きさとダイナミックな展開が際立っているところが特徴だと思う。そこがいわゆる他のヘアメタル系統バンドと違うところであり、私が彼等に魅了されている点でもある所を再認識した一枚。
7.THE ROLLING STONES "Hackney Diamonds"
チャーリー・ワッツが亡くなり、2005年以来のストーンズの純然たる新作がリリースされても、今ひとつテンションが上がらなかったが、聴いてみてビックリ!こんなにもエネルギーに溢れ、演奏も若々しくパワーがあり、そして楽曲の充実っぷりが素晴らしい。
内容の素晴らしさの前にミック・ジャガーも今年で80歳(!)となり年齢を重ねる次元が常人とは違うのでもはや参考にならない件や(笑)、チャーリーの残したドラムトラックを一部使用、元メンバーのビル・ワイマンの参加やレディー・ガガのゲスト参加等といった話はエッセンスに過ぎない。それだけの内容の良さが際立っているアルバムだと思うが、サウンド面で大きな貢献をしていると思われるのが若きプロデューサー、アンドリュー・ワットの手腕。現代っぽさとストーンズの持つ普遍性を丁度良いバランスにまとめあげたところにタイムレスなサウンドの秘密の一つがあるかもしれない。
6.CHURCH OF MISERY "Born Under A Mad Sign"
日本が世界に誇るドゥーム・ストーナーバンドの新作は再びオール日本人によるメンバーでの録音。今作もCHURCH OF MISERYならではブルースの成分がたっぷり入った音楽的豊かさがあるドゥームメタルサウンドは健在。そのブルースの色合いと音楽的説得力の高さがシリアルキラーを題材にした歌詞世界にヒリヒリとしたリアル感を生み出し、距離を置きたいけど覗いてみたい・・そんな微妙な感覚にさせてくれるところがある意味、魅力なのかもしれない・・。
毎回メンバーチェンジが起きてしまうのはこのバンドの性のようなものだが、そんな状況でも質を一切落とさず、バンドとしての継続性を保っているところにバンドの中心人物である三上達人の情熱の高さを感じる。
5.BLOOD CEREMONY "The Old Ways Remain"
女性ボーカルを擁するカナダの70年代回帰型サイケ、オカルトロックバンドの5作目。ドゥームの文脈で語られることが多いような気するが、ドゥームメタルバンドの影響元となる70年代バンドの色合いが強い。今作はより誤解を恐れずに言えば70年代ロック的なキャッチーな面が強くなり、今まで一番聴きやすいかもしれない。それでもそのキャッチーさの中からにじみ出るほのかなオカルト臭が独特の雰囲気を生み出し、ロックにまだ神秘性があった時代を今に再現してくれていると思う(それがThe Old Ways Remainということかな!?)。
4.BARONESS "Stone"
今までは色をモチーフにしたタイトルのアルバムだったが、初めてそのモチーフから脱却し、また、初めて2作連続同じメンバーで製作したこともあり、今までの中で一番変化を感じるアルバムとなった。スラッジ風味なところはかなり薄くなり、より普遍的なハードロックな色合いが強くなったと思う。スッキリとした音像となり、多様性ある内容にも関わらず散漫にならないところは、アルバムの曲順・構成含めて非常に練られているので、アルバムが1つの組曲のように感じるぐらいだ!?
彼等を今まで敬遠していた人にこそ、一度は聴いてみてほしい。
ちなみにリードトラックの"Last Word"はOZZY OSBOURNEの"Bark At The Moon"のような華麗なギターソロが出てくるが、そういったソロがあるのはこの曲だけだが、バンドに変化を感じる意味でも象徴的な曲だと思う。
3.STEVEN WILSON "The Harmony Codex"
前作の"The Future Bites"はエレクトロニクスな路線に舵を切り、最近のSTEVEN WILSON(SW)のソロ作品の中でも大きな変化を感じた作品だった。その後にPORCUPINE TREEの復活の影響があったのかはわからないが、前作の要素はありつつも、プログレな作風への揺り戻しがあるが特徴だと思う。
前作の路線な曲もごく自然に溶け込んでいて、それをアルバムの中に効果的に配置しているので、これもSWを構成する要素である。アルバムの構成やサウンドメイキング・音質の良さ、どれを取っても一線級の出来はさすがです。
2.RIVAL SONS "Darkfighter"
1.RIVAL SONS "Lightbringer"
2023年の1位と2位に上げたのはRIVAL SONSの新譜2枚!
1年にアルバムを2枚リリースするというインパクトもさることながら、陰と陽をモチーフにしたアルバムのアートワーク含めて、聴く前からワクワクさせてくれるバンド側の仕掛け含めてウルトラグレイトな内容。
先にリリースされた"Darkfighter"が躍動感あるサウンドを重視しているのに対して、後発の"Lightbringer"はプログレにも通じる多様性あるサウンドを重視している特徴が見えるのかなと思った。アルバム"Lightbringerの1曲目は"Darkfighter"という曲があるところもLED ZEPPELINの"Physical Graffiti"に前アルバムのタイトル"House Of The Holy"が曲として収録されていることは意識しているんじゃないかなー。
このバンドはLED ZEPPELIN meets THE DOORSが基本のだと思っているけど、70年代ロックは今よりももっと自由で柔軟だったことを現代のフィルターを通しての表現が今まで以上に色濃く出ているところにこの2枚の魅力が凝縮されているように感じる。
こんな素晴らしいアルバムを年に2回も出したあとはどうしちゃうんだろう?と余計な心配をしたくなる(笑)折来日を!
以上10枚をご紹介しましたが、まだ語り足りないので(笑)追加でご紹介。
11.坂本真綾 "記憶の図書館"
産休明けとなってからの初のアルバム。坂本真綾自身がコンセプトストーリーを作り上げ、多くの外部ライターとコラボしながらアルバムを製作しているが、その繊密な世界観を構築するにあたってシンガーとしてでなく、プロデューサー的な意味でも、注目して良い内容だと思う。
潤いある歌声を活かしながらもキャッチーな楽曲の中に設定されたストーリーを読み解くというのは彼女がいつもアルバムという形態を重視しているアーティストであることを改めて感じさせてくれた。
12.浜田麻里 "Soar"
5年振りとなるアルバム。1曲目の"Tomorrow Never Dies"の怒涛のプログレメタルっぷりにビックリするが、アルバム全体は彼女らしいキャッチーな曲も多い。音楽スタイルは全く違うが、先程の坂本真綾と同じく、浜田麻里も自分の繊密な世界観を作り上げてプロデュースする上でそれにマッチするミュージシャンやソングライターとコラボするというところは共通点があると思う。
衰えを知らない歌声にはもはや神々しさが備わっているが、そのボーカルでさえも作品の一つのパーツという扱いにしているように感じるので、彼女もアルバムを一番映えるためにどうするかを突き詰めている人なんだなと思った次第。
13.THE STRUTS "Pretty Vicious"
ブリティッシュ・ロックの伝統を受け継ぐ英国出身バンドの4作目。さすがにもう中堅の領域に入ってきたので、ここで一発ガツン!と来るアルバムを出してほしいと思っていたが、今作はそれが出た!どの曲も耳に残るフック満載で、今作はギターソロ含めてのギターの鳴りっぷりが強く印象に残る曲が増えたので、バンドとしてパワーアップしているが感じることができた。
最後の"Somebody Someday"はイアン・ハンターの1976年の"All American Alien"に収録されている"Irene Wilde"の改名カバーだが、伝統の系譜が見てとれるかも。
14.KK's PRIEST "The Sinner Rides Again"
JUDAS PRIESTから脱退したK・K・ダウイングが元メンバーのティム・リッパー・オーウェンスと組んだバンドの2作目。ロックの殿堂でプリーストと共演したK・Kだが、その後はバンドと仲直りすることは結局無く、バンド側マネジメントの扱いも非常に冷たかったようで、ますますその怒りがこのアルバムに込められていると思う(笑)。前作でも感じたけど、メタルって、やっぱり怒りを表現してなんぼだと思う。このアルバムもその怒りを上手く昇華しているし、リッパーのボーカルもその怒りを増幅させるか如く怨を感じて、非常にかっこよい。
プリーストを彷彿とさせる曲名が多いが、K・Kだけでもこれだけの曲が作れるという彼のプライドが見て取れるし、曲名に負けない正にメタルゴッドな内容だと思う。こうなったら両バンド同士でバチバチとやりあってファンを楽しませてほしい!
15.GREEN LUNG "This Heathen Land"
12月にフォロワーさんから教えてもらったイギリスのドゥーム・ストーナー系バンドで結成は2017年とまだ若手の部類なのかな?GHOSTのトビアス・フォージによく似た声質を持つボーカルとキーボードを効果的に使ったキャッチーなドゥームな内容でなおかつ歌メロがメロディアスなせいか非常にGHOSTっぽい(笑)
今やGHOSTがハリウッド的なスケールの大きいオカルトな世界観を擁しているのに比べて、こちらはあくまでもアンダーグランド臭満載な世界観なので、GHOSTのような方向性は目指さないでいてほしい。GHOSTのようにメイクはしておらず、とてもスタイリッシュとは言えない暑苦しい面々のようで(笑)、それであのポップな歌声は別の意味でギャップ萌えがあるかもしれない。
This Heathen Land
Green Lung
Universal Import
2023-11-10
16.MOON SAFARI "Himlabacken Vol.2"
日本で確かなファンベースがあるスウェーデンのプログレッシブロックバンドの10年振りとなる新作。知り合いに今まで聴いていなかったなんて、意外!と言われたが、私も今作でやっとちゃんと聴いたバンドだ(笑)
いきなりVAN HALAENの"Jump"を彷彿とさせる80'sキーボードサウンドに、良い意味で思ったものと違う!と思ったが、ASIAを彷彿とさせるメロディラインに分厚いくて清々しいコーラスが重なり、曲によってプログレバンドらしく曲が展開がしていくので、非常に聴きごたえがある。
12月にリリースされたので、もう少し聴き込みが進めんでいたら、トップ10に入れたかも・・・・!
17.EDU FALASCHI "Eldorado"
ANGRAの二代目ボーカリストだったエドゥ・ファラスキのソロ名義2作目。前作に引き続き、まんまANGRAとも言うべきメロディックパワーメタルアルバムとなっているが、本家よりラテン音楽の要素が強く出ており、個人的にはエドゥの方が魅力的に見える。緩急使い分けた楽曲はアステカ文明を舞台にした歌詞の世界観と非常にマッチしている。
今年はANGRAも新譜をリリースしたが、音質的にもカッチリとしたエドゥの方が好みかな〜。
ハイトーンに頼り過ぎない彼のボーカルはやっぱり好きなんだなと再認識した一枚。
18.EXTREME "Six"
アルバムを出す出す詐欺が続いていたが、やっと15年振りの新譜がリリース。このゴリラのジャケは謎だが(笑)、ファンクだけじゃない、QUEENやVAN HALEN、LED ZEPPELIN・・・EXTREMEを構成する要素は非常に多様だが、今作もその幅広い音楽性があるアルバムであり、そこにゲイリー・シェローンのボーカルとヌーノ・ベッテンコートのギターワークを中心としたサウンドで違和感なく聴ける構図は不変。EDMっぽいサウンドが曲があるなど、新しい要素もあるがそれも良い意味でアクセントになっている。ゲイリーとヌーノのコーラスワークも聴いていて実に気持ちが良いし、15年待った甲斐があった。でも次は2年後ぐらいに出してほしい(笑)
19.THE DEFIANTS "Drive"
現DANGER DANGERのブルーノ・ラヴェルとロブ・マルセロと元メンバーのポール・レインが組んだバンド(プロジェクト?)の3作目。DANGER DANGERでは新作は望めないようなので、その創作意欲に対する欲求はこっちで解消している模様。ポールの力強く切なさもあるボーカルを軸にほぼDANGER DANGERといえるメロディアスなハードロックサウンドは今作も健在。
個人的に一撃必中な曲がある前作と比べて今作はそこまでのレベルの曲は無いように思えるが、アルバム全体で出来は今まで一番良い。
そろそろ、ライブ活動してくれませんかね〜?DANGER DANGERの曲もできるし、良いこと尽くしだと思うぞ。
20.PETER GABRIEL "i/o"
20年以上をかけて製作されたされる21年振りとなる新作で、Bright Side MixとDark Side Mixの異なるミックスをそれぞれ収録したディスク2枚組というボリュームにもビックリ。
秀逸なサウンドプロダクションとその濃密な世界観に圧倒されるが、聴きやすい部類の曲が多く、ポップス的な高揚感は無いが、間口は広く、しかし中に入ってみたら迷宮だった・・そんな感触を受けた。
非常に聴き込み甲斐あり、曲の理解が深まる度に新たな良さを発見しつつあるが、アルバムに触れたのがまだ一ヶ月未満ではまだまだ道のりは遠い・・・。
結果的に計20枚を紹介^^;
他にもMETALLICAの"72 Seasons"、LOVEBITESの"Judgment Day"、MANESKINの"Rush!"等、2023年は注目のアルバムがいつになく多いように感じた。METALLICAは日本ツアーが組まれていたなら20枚に入れていたなぁ〜(笑)