Heart Of Steel

買ったアルバムの感想を語る場

JUDAS PRIEST

「メタルファンは、死ぬまでメタルファンなんだ。パーマネントに『あ~○○年の夏はSLAYERをよく聴いたよな~』みたいな聴き方をする奴は一人もいないよ」byロブ・ゾンビ

【レビュー】JUDAS PRIEST "Invincible Shield"

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今年でデビュー50周年を迎えたJUDAS PRIESTの19枚目のスタジオアルバム"Invincible Shield"がリリースされた。 

楽しみにしていたが、期待はそこまでしていなかった。1曲、いや2曲ぐらいライブでも映える曲があれば御の字。もしくは前作の"Firepower"と同等であればそれで十分と思っていた。 

全世界では3/8にリリースだが、日本盤は3/6に前倒しで発売。私はフラゲで到着して3/5の火曜日に聴くことができた。

1曲目の"Panic Attack"は80年代っぽい音が入ったイントロに今までとは違う何かを感じとり、そこから怒涛の勢いで突き進むこの曲に「 え、ちょっと待って、凄いー!」と感嘆し、次の2曲目の"The Serpent And The King"で更に畳み掛ける構成に平伏すこすことしかできず、そして3曲目の"Invicinble Shield"には白旗を上げて降参するしかなかった・・・!!





この3曲の流れは初めて"Defeneders Of The Faith"を聴いた時と同じ興奮度合いがあったように感じる。それだけ、インパクトがある楽曲がこうも勢いよく出てくるとは・・・。
特に"Invicinble Shield"はリフ、リフ、リフの怒涛の構成から華麗なツインギターハーモニーに入り、曲の終盤に更に盛り上がる内容で、そして少し凝った展開もあるところに今作は今まで以上に違う何かがあるところを強く表現していると思った。


アルバムの中盤はミッドテンポで、キャッチーな歌メロが堪能できる曲が多く配置され、終盤はダイナミックで英国メタルの妙が堪能できる。本編最後の"Giants In The Sky"は70年代のハードロック時代のプリーストを彷彿とさせるドラマ性のある楽曲で締めるアルバムとしての構成もお見事。


キラーな楽曲がとにかく多いが、作曲クレジットを見ると、グレン・ティプトンロブ・ハルフォードリッチー・フォークナーの3人の名前がありそこは前作と一緒だが、今作は総じて特に細部まで拘ったと思われるアレンジが際立っているように感じる。そこはプロデューサーでもあり、ツアーにはギタリストとしているアンディ・スニープの働きも大きいと思う。
バンドを客観的に見れると思われるリッチーアンディグレンロブの重鎮二人によるマジックが起き、リッチー加入以降で一番の内容・・・・いや、ロブ復帰後で一番の内容といえるかも。そのロブのボーカルも72際とは思えないパワーに円熟味があるから、今が全盛期といっても大げさじゃない。


アンディ・スニープらしいギターの音色に特に拘りつつも全体のサウンドプロダクションのバランスに気を使ったと思われるサウンドも非常に素晴らしく 、演奏にもキレを感じる。
グレンがパーキンソン病と戦っている関係上、ギターは基本的に全てリッチーによるものなのかなと思うが(ロブのインタビューによるとグレンが弾いたパートもあるらしいが、クレジット面ではどの曲が、というのは明記はなかった)、ギターソロ含めてリッチーにここまでかっこよいフレーズを奏でることができるとは嬉しい驚きでもあった。


そのリッチーが加入した最初のアルバム"Redeemer Of Souls"は70年代後期のJUDAS PRIESTのアルバムを想起させ、その次の"Firepower"は80年初期の"British Steel"から"Screaming For Vengeance"を想起させていたと思う。そして、この"Invincible Shield""Defenders Of The Faith"を想起させる!
つまり、JUDAS PRIESTの歴史をもう一度振り替えつつも現代に再定義していた結果だと思うが、その集大成がこの"Invincible Shield"なんだと思う。


私がプリーストのリアルタイム体験は"Jugulator"からだったけど、それから約30年弱・・・まさか2024年に"Defenders Of The Faith"がリリースされた時と同じような興奮が体験ができるなんて、こんなに嬉しい驚きはない。
そういえば、"Invincible Shield""Defenders Of The Faith"いうアルバムタイトルには共通するものがあるように思える。相手を攻撃するのではなく、何かを護る・・・それは互いにヘヴィメタルコミュニティの絆や繋がりを重視することをイメージするアルバムタイトルだからかな?


そんなことを思いつつ、アルバムを繰り返し聴いていて、次に思うことは新譜からの曲をライブで聴きたい!ということだ。1〜2曲だけと言わず、少なくとも3〜4曲は聴きたい。それだけの価値がある楽曲だし、やはりバンドと同じ現代を生きているからこそ、新曲をやって、再びバンド黄金時代をこの現代に体験したい。ノスタルジーに浸るのも悪くないが、まだまだバチバチとやり会えるならそれが観たいのだ。


JUDAS PRIESTから脱退して、その復讐心?に燃えるK.K.ダウニングが元メンバーのティム・リッパー・オーウェンズと結成したKK'S PRIESTも強力なアルバムを昨年リリースして、今年はツアーを本格化させる模様だし、異なるJUDAS PRIEST同士が同じ年に日本に来ることだって考えられるかもしれない。
メンバーの歳を考えると残された炎はもしかしたら短いかもしれないが、JUDAS PRIESTの新旧楽曲が結果的に2つに別れたバンドでそれぞれ見れる可能性があると考えると、こんなに面白い時代は無いのかしれない!!


"Invincible Shield"は通常版とDX盤の2種類があるが、購入したDX盤はハードカヴァーブック仕様となっておりボーナストラックとして3曲が追加収録されている。本編の流れを考えるとボーナストラック扱いも納得できるが、埋もれたままにするのは非常に惜しい楽曲ばかりなので、オススメはDX盤!

インヴィンシブル・シールド (デラックス・エディション) (特典なし)
ジューダス・プリースト
ソニー・ミュージックレーベルズ
2024-03-06


 

【ライブレポ】JUDAS PRIEST@TOKYO DOME CITY HALL 2018.11.28


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JUDAS PRIESTFirepowerジャパンツアーは追加公演となったTOKYO DOME CITY HALLへ行ってきた。ティム・リッパー・オーウェンズ時代のDemolitionツアーからプリーストのライブは欠かさず観に行ってきたが、前回のRedeemer Of Soulsツアーは引っ越しの関係もありに行けず、6年振りとなるプリーストライブとなった。そして、今までのプリーストライブの中で最もエモーショナルな気分となったライブだった・・・・。


追加公演にも関わらず、東京本公演よりも先にソールドアウトとなったが、立地的・会場キャパ的にそうなるのは必然。しかも、11/28は東京で他にKAMELOTHARDCORE SUPERSTARBRITISH LIONKING CRIMSONのライブが被っているという日。みんな集めてフェス開催にすればよかったかも?HARDCORE SUPERSTAR以外の主催はクリエイティブマンだし(笑)

さて、JUDAS PRIESTはご存知のように今ツアーからグレン・ティプトンがパーキンソン病のため、ツアーは不参加。プリーストがプリーストたるところは人それぞれだと思うが、個人的には音楽的支柱でもあるグレン・ティプトンがいないプリーストライブなんて想像も付かないし、何を期待すればいいのかわからなかったのが正直なところだった。K.K.ダウニングの不在はリッチー・フォークナーが十分過ぎるほどその穴を埋めてきたが、それはやっぱりグレンがいてからこそと思っていたので。

ライブはBLACK SABBATH"War Pigs"をイントロSEとして鳴り響き、新譜1曲目からの"Firepower"でスタート。ライブが始まった途端、前述した懸念はどこかに吹き飛んでいた・・・。メンツ云々じゃなくて、楽曲のパワーがそれを上回るということか!?
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続いて、一気に時代は遡り、"Running Wild"へ。まだハードロックの香りがあるこの曲、セットリストに再び入ったのはリッパー時代以来?ライブは軽快な"Grinder"から、次はなんと、"Sinner"というクラシックプリーストナンバーを連発。ロブ・ハルフォードは今まで観た中でも特に声が出ていたし、K.K.の後釜だけでなく、今回のツアーではグレンの穴埋めまでも行うリッチーの二人は特にライブをグイグイと引っ張っていく存在として、気合がいつも以上に入っていたように見えた。"Sinner"のクレイジーなギターソロは全盛期のK.K.を彷彿とさせる動きが印象的だった。


サポートギタリストとしては”Firepower"のプロデューサーでHELLのギタリストでもあるアンディ・スニープが努めており、サポートっぽく、一歩引いた感のパフォーマンスだが、ソリッドなリフワークでしっかりと音の屋台骨を支えていた。リッチーとアンディのギターワークのおかげなのか、サウンドに躍動感や鋭さは今までのプリーストライブの中でも特に際立っていたように思う。災い転じて福となすとはこのことか・・・?(アンディ、次はHELLで来日してね!)
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イアン・ヒルスコット・トラヴィスのリズム隊は長い間見た目が変わっておらず、この二人を見るとなぜかホッとするw会場の音響も良好なのでイアンのベースもよく聞こえる!
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前回ツアーは観ていないからわからないけど、今回のツアーは映像による演出がしっかりとしており、今までのチープ感が無いことにビックリ!(笑)プリーストの映像演出は今まで、A級感になれないもどかしい感があったが、今回ので、ようやく標準になったというか。
"The Ripper"では切り裂きジャックに関する映像を出し、そのおどろおどろしさを演出
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往年の名曲はアルバムジャケを映して、ファンの高揚感を煽るところは今まで通り。
"Desert Plains"だと、"Point Of Entry"のジャケだが、個人的には別バージョンの方が馴染みあるかな
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"Turbo Lover"からはもちろんタイトル曲!
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なぜか"Green Manalishi"ではメタリオンが登場。二本の角があるからかな・・・?
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なお、ロブは曲によって様々なコートを着替えていた
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スターウォーズのライトセーバーのようなちょっとした演出も!どう観てもジェダイの騎士というよりドゥークー伯爵にしか見えないw
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"Hell Bent For Leather"ではおなじみのバイクに跨っての登場。
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こうした泣く子も黙るプリーストクラシックをたっぷりかつツアー毎にオオッ!この曲を演るのか!というちょっとした驚きも入れるところがニクイ。今回は"Running Wild""Sinner""Night Comes Down"といったところか。

そんなプリーストクラシックに負けないぐらい新譜"Firepower"からの楽曲がライブでも素晴らしかった。新譜からは"Firepower"、"Lighting Strike""Never Surrender""Rising From Ruins"の4曲だったがその中で"Never Surrender"は映像に映し出されるPVに出てくるグレンの映像や歌詞からして、今のバンドの気持ちを最も強く表現しているようでグッと来るものがある。
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ライブを観ていて、ここまでグレンの不在を大きく感じることはなかったことに気付く。これはステージにいる5人が100%じゃなくて120%の気持ちを持ってライブしているからじゃないだろうか。最初に書いたとおり、ロブのボーカルは今まで観た中で最も凄みがあり、グレンがいない中で彼が更にバンドを引っ張っている感がある。まあ、"Freewheel Burning"のサビ丸投げや"You've Got Another Thing Coming"は歌メロを大きく崩して歌っていたところはあったが、そこは重箱の隅を突くところかな(笑)
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そしてロブ以上にバンドを引っ張っていた感があるのがリッチー。最も若いメンバーでありながら、グレンが不在の中、ギターパートで最も重要な存在となったが、立派に役目を果たしたと思う。ライブ本編最後の"Painkiller"ではグレンのギターソロパートでは映像にグレンが映る中、彼のあのソロを忠実に再現。このシーンだけでも目頭が熱くなるのに、曲の終盤のK.K.のソロパートもアンディではなくリッチーが弾くという!なんて、熱い展開なんだ!!!

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そんな流れで本編が終了し、アンコール1曲目は"Hellion"〜"Electric Eye"かな、と思ったら"Metal Gods"から始まり、そこに登場したのはグレン・ティプトン!!!!!!
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地方公演では出演しなかったグレン、事前にTwitterで東京公演に合わせて来日していたのは知っていたので、出てくるとは思っていたが、なにせその日の体調次第・・という面があるから、彼がわざわざ日本にまで来てくれただけでも感激なのにライブにも出演するだけで、目に涙が・・・

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さすがに以前のような動きはできないが、ソロを弾く場面もあり、そしてトリプルギターフォーメーションを見せるなどまだまだ元気な姿を見せてくれた!
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ロブ、リッチーと一緒にフォーメーションするシーンは特にこの日のハイライトといっていいでしょう!
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グレンとリッチーが顔を合わせながら弾いているシーンはちょっと目頭がやばかったなぁ・・・
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そして、ロブと肩を組んでいるシーンはこのバンドの歴史を考えると更に感慨深い!!!
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グレンはアンコール全3曲に登場。パーキンソン病と戦っている中、たとえ以前のように身体が動かなくても、"Never Surrender"なところを日本のファンにも見せてくれて、その心意気、バンドへの姿勢、音楽への情熱はちっとも衰えていないところが多くの人を勇気付けてくれる。冷静に考えてグレンがツアーに出れない状態はバンドの危機であるが、このままじゃ終わらない、終わらせてたまるか!という気持ちがグレンやバンド側にあるんだと思う。

ヘヴィメタルを聴く理由は人それぞれだと思うが、単に楽しいだけでなく、人生を鼓舞してくれる音が最も詰まっているのがヘヴィメタルだと思う。そのヘヴィメタルの歴史ともいうべきJUDAS PRIEST、今回のライブでなぜ自分がヘヴィメタルが大好きなのかを再認識させてくれた。

来年はバンド結成50周年を迎えるがまた新作を作ってツアーで来日してくれると信じている。グレンもその時に出演してくれたら、こんなに嬉しいことは無い。METAL GODは引き続き、"Pure Fucking Heavy Metal"を演ってくれるに違いない!!


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最後はグレンも列に入って、映像には"The Priest Will Be Back"の文字が!ファンはいつでも待っているぞ!!
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Setlist
01.Firepower
02.Running Wild
03.Grinder
04.Sinner
05.The Ripper
06.Lighting Strike
07.Desert Plains
08.No Surrender
09.Turbo Lover
10.The Green Manalishi (With The Two Prong Crown) (Fleetwood Mac cover)
11.Night Comes Down
12.Rising From Ruins
13.Freewheel Burning
14.You've Got Another Thing Coming
15.Hell Bent For Leather
16.Painkiller

〜Encore〜

17.Metal Gods (with Glenn Tipton)
18.Breaking The Law (with Glenn Tipton)
19.Living After Midnight (with Glenn Tipton) 
プロフィール

sekibow

熱苦しいハードロック、ヘヴィメタル、スラッシュメタル、ドゥーム・ストーナー系メタル、プログレ、そして70年代〜80年代のウエストコースト系ロックを愛するパフュメタラー。Sign of the Hammer Be My Guide

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