Heart Of Steel

買ったアルバムの感想を語る場

STEVEN WILSON

「メタルファンは、死ぬまでメタルファンなんだ。パーマネントに『あ~○○年の夏はSLAYERをよく聴いたよな~』みたいな聴き方をする奴は一人もいないよ」byロブ・ゾンビ

【レビュー】STEVEN WILSON "The Harmony Codex"

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STEVEN WILSONの2年振りとなる新譜"The Harmony Codex"、様々な意味で音楽に対する好奇心を刺激しまくっており、何回もリピート中。

前作の”The Future Bites”はエレクトロポップに振り切った内容だったので、その変化に驚きもありつつその刺激的な音作りと安定した楽曲の良さもあり、大好きなアルバムとなった。
そんな大きな変化があったアルバムの次作が一番注目すべきポイントだと思っていたので、今作の内容はとっても楽しみにしていたが、アルバムの発表があったのは8月の終わりぐらい?だったの思うので、急な発表でビックリ!
スティーヴン・ウィルソン(以下SW)は他のアーティストのリミックスやマスタリングの仕事を沢山こなしているので、アルバムを作る時間がそもそもあるのか疑問だったが、それでもこんな素晴らしいアルバムを作るなんて、この人はやっぱり常人離れしている(笑)まあ、"The Future Bites"はコロナ禍の中でリリースしたアルバムでもあり、このアルバムに伴うツアーも無かったので、時間があったということかな??
 

意味深なテトリスのような10色ブロックに後ろに聳え立つビルが印象的なアートワークで、どんな音なのかわくわくしてたが、いざ聴いてみると、前作のようなエレクトロポップな曲もあれば、バリバリのプログレな曲も復活しているなどかつてないほどバラエティー豊かな内容だと思った。そこに彼ならではのダークでアンビエントな色彩が散りばめられているので(前作はまた違った暗さがあったけど、今作はそれとは違う。うまく言葉で表現できないけど・・・)、新旧のファンにとっても違和感なく聴ける内容だと思う。

SWをサポートするメンツもお馴染みのミュージシャン(ニック・ベッグスアダム・ホルツマンニネト・タイブ等)が多く参加しているが、再びドラムのクレイグ・ブランデルが参加しているのが嬉しいところ。"To The Bone"ツアー時で観た際も彼のドラムは素晴らしかったし、やはり多くの曲でクレイグが参加しているということは、彼がSWにとって、ドラムとしては一番手なんでしょうかね?
いずれ今作に伴うツアーもあると思うけど、その時もクレイグが第一候補のような気がする・・。まあ、そのクレイグスティーヴ・ハケットのツアードラマーでもあるので、もしかしたら、その辺の兼ね合いが出てきてすぐにツアーというわけにはいかないかも。今のところツアーの話は出ていないようだし。 


アルバムの曲の話になるけど、今作はプログレな曲が復活したのは個人的に嬉しい!
その象徴的な曲とも言える"Impossibe Tightrope"は10分ほどある長編曲だが、キーボードのアダム・ホルツマン(今作でもガッツリ参加しているので、SWのソロに欠かせない人ですね)のスリリングなインストパートもあり、サックスも入っているなど聴きどころが満載。
 
他に長編曲がもう2つあるが("The Harmony Codex""Staircase")どれも作風が異なる内容で、それはこのアルバム内の曲全てに言えるけど曲毎の作風がプログレな曲にもエレクトロな音が入っているなど、前作の要素もあるので、単に昔に回帰しただけじゃなく、進化させているところが刺激的だと思った。

 
エレクトロな音も耳障りにならない柔らかい感じがして、そこはアナログシンセを沢山使ったインタビューで言っていたので、スゥ~と耳に入ってくるという柔しさという感触があり、だからこそ違和感なく聴けるのかなと思っている。
Youtubeで先行公開された”Economies Of Scale”は前作に近いエレクトロポップだな~ぐらいしか思っていなかったが、アルバム通して聴くと、思った以上に良いじゃないか!となるので、やっぱりアルバムで通して聴くということは重要だなと思ったwそういう意味でも彼の最近のトレンドな曲も自然な感じで同居しており、
 

日本盤は今回もリリースされない模様(涙)のため、日本からのインタビューはあったとしても数多くないような気がするが、作品を作った背景や歌詞、アートワークの意味合い等知りたい話が沢山あるので、どこかでぜひインタビューしてほしいですね〜。

とりあえず、新作について語っているインタビューはネットでいくつかあったので、紹介してみる。
↓は新作については製作アプローチだったり、音作りに関してが中心の内容でで歌詞等についてはほとんど触れていないが、それでも興味深い話は沢山あった。
 
気になった発言の一部を意訳 
・いつも方向性を決めてから製作していたが、今回は方向性を予め決めないことが方向性
・前作と違って今は結婚して、二人の連れ子がいるので、家にあるスタジオに行ったりきたりの生活をしていて、集中して仕事をするとしてもせいぜい30分ぐらい。それが逆に曲に新鮮さを出しているのかも 
・アナログシンセを沢山使った
・完璧なサウンドよりあえて不完全なところが魅力的である(完璧なピアノサウンドにテープで再生しているようなプラグインソフトを使ったりもした)

やはり今作はSWにとって、結果的に(?)今までの音楽スタイルの集大成的な作りのようですね。それに相応しい充実した内容で今年のベストアルバム候補に名乗り出たと思うほど、素晴らしい内容だと思ってます。


あと、これは新作とは関係のない今年の始め頃のインタビューだけど、こちらはリミックス、マルチチャンネルに関する仕事も含めて更に興味深い内容が盛り沢山だった。どんなに完璧なリミックスをしても、1曲のこのパートだけ少し定位をオリジナルと変えていたら、Amaoznレビューに星1つで付けられてしまった、とかの話があって、マルチチャンネルのリミックス制作過程は大変だと思うが、SW自身はめっちゃ楽しそうにしているのが印象的でしたね。






今回もCD、レコード、そしてBlu-ray Audioと各種フォーマットを購入。
SWに関してはもはや複数フォーマットで欲しくなってしまっているので、よくないですね(笑) 
レコードはオレンジVinylでアートワークが特に映える!音に関しても、低音部分に厚みがあるので、CDとはまた違った良さがあるし、
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アナログ盤をBurning Shedから購入したらポストカードのおまけ付きだった

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Blu-ray Audioの5.1chミックスは解像度がグッと上るので、細かい音がよくわかり、これもまた聴いていて楽しい。SWならではのバランス感覚でリアスピーカーに音を振りつつも遊び過ぎない丁寧なミックスが今回も素晴らしいと思った。
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Blu-ray Audio盤は96/24kHzのステレオサウンド、96/24kHzの5.1chミックス、そして48/24kHzのアトモスミックスとPV2曲も収録

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各曲ごとに用意された静止画で再生
 
いつかはドルビーアトモスミックスも聴いてみたいが、天井か壁にスピーカーを設置しないといけないから、そこは大きなハードルだな〜。2番目に紹介したインタビュー動画でSWは「多くの人は7.1.4chの環境は無いので、ドルビーアトモスといった環境で聴けるセッションを多く開催したい」という発言をしていたので、日本でもアーティスト主催のそういった催しが開催されると、良いですなー。

The Harmony Codex
Steven Wilson
Spinefarm
2023-09-29
 

【レビュー】STEVEN WILSON "The Future Bites"

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現在のプログ界で最も影響力のあるアーティストといえば、スティーヴン・ウィルソン(以下SW)といって過言ではないと思う。
PORCUPINE TREE、ソロアーティストとしての活躍だけでなく、KING CRIMSONを始めとした数々のプログレ名盤のリミックスなどなど・・・。

2017年以来の彼の新しいソロアルバム"The Future Bites"がリリースされたが、これが傑作!早くも今年のNo1アルバムはこれで決定!?(笑)それぐらい中毒性とインパクトのある内容だと思う。

ざっと、彼のソロアルバムの流れを振り返ると、2013年の"The Raven That Refuse To Sing"はSW流のプログレ様式美を突き詰めたアルバムだったが、2017年にリリースしたアルバム"To The Bone"ではよりポップなアプローチが増え、その中で彼のポップミュージックの愛が詰まった"Permanating"はアルバムの中でも重要な曲だったし(ライブでもこの曲の前にポップ・ミュージックへの想いを語っていた)、リミックス方面でもTEARS FOR FEARSを始めとしたポップミュージックに関わる割合も増えてきている。

そんな流れの中で、次のソロアルバムはさらなるポップ化に進むと思っていたけど、最新作"The Future Bites"は予想を遥かに上回る内容だった!

本当は2020年に発売されるはずだったが、新型コロナウイルスの影響でリリースは延期されていたのでその間は小出しで音源が公開されていたが、あえて情報はシャットアウトして、ほぼまっさらな感覚でアルバムを聴いたところ、なるほど、「おおっ、そう来たかー!」と唸る内容。

※アナログ盤は赤色盤を購入
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もはやプログレというカテゴリーは不要。予想通りポップ化を更に突き詰めているが、エレクトロな処理を多用し、そして言葉で上手く言い表せない不安感を全体的にまぶした内容で、前作"To The Bone"で見せたポップさとはまたベクトルが違う。
アートワーク含めて楽曲の構成はシンプルにしており、サウンド面ではPINK FLOYD"The Wall"に通じるところが多いように思える。しかし、構成は一見シンプルに見えるかもしれないが、サウンドの密度は今まで以上で実に細かい細工が仕組まれており、ノイジーでアバンギャルドなギターサウンドが要所要所にあるなど、プログレ的な香りはサウンドの細部に仕組まれているといった印象。
コンセプトアルバムではないけど、インタビューでもSNSと人との繋がり、消費行動に関するテーマを元にしており、あえて人工的なサウンドと温かみあるサウンドが同居している点も面白いですね。

キャッチーさは過去最高でサウンドの仕掛けが満載、そしてアルバムも41分強というコンパクトさからつい何度も繰り返し聴きたくなり、最初違和感を感じたサウンドも次第に馴染んでハマっていくとう中毒性がこのアルバムの最大の魅力かな!?
SWは今作で大きく音楽スタイルを変えており、彼にプログレな部分を期待している人にとっては不満かもしれないけど、PINK FLOYD"The Dark Side Of The Moon""The Wall"のようにプログレというカテゴリーに囚われない普遍的な音楽を目指しているのでは?と思った次第。

SWが今作のアルバムのテーマ、ドルビーアトモス仕様、好きなオーディオファイルアルバムについて語るインタビューの中で度々、PINK FLOYD"The Dark Side Of The Moon"の名前を出している。



アルバムのコンセプト云々は置いておいても、"The Future Bites"は曲単位で聴いても耳に残るフックとキャッチーさが秀逸。どの曲もハイライトではあるが、敢えて印象的な曲をご紹介。

アルバム2曲目の"Self"。重低音なエレクトサウンドが印象的。今作は特にファルセットを多用する歌い方が多いような。
SWの顔が次々と著名人に変わっていくのが面白いPV。最後に出てきた人物にも注目。



"12 Things I Forgot"はアルバムの中でも牧歌的な曲で、エレクトロ要素が最も薄く、普遍的なポップソング



アルバムの代表曲はこの"Personal Shopper"だと思う。不安感を与えるサウンドにビッグなコーラスが同居して更に印象的に。


PVは6分に短縮されているが、曲のテーマをわかりやすく表現しており、映像も凝っている!



"Follower"もサビのキャッチーさが特に優れている。グルーヴ感あるベースサウンドに、ノイジーでアヴァンギャルドなギターソロはKING CRIMSONっぽいところがあるかも。



さて、このアルバムのBlu-ray Audio盤も購入。目当ては5.1chミックスなんだけど、今作はドルビーアトモスでも収録されている。私の手持ちのAVアンプは古いので、ドルビーアトモス非対応だけど、通常の5.1chサウンドでも十分過ぎるほどの臨場感。最初から5.1chミックスを意識して作ったサウンドなのかな?というぐらい。細かいエフェクト等がたくさん入っているので、5.1chではその辺の細かいサウンドがハッキリと堪能できるので、環境がある人にはオススメ!
ドルビーアトモスのサウンドはSWのインタビューでも語られているように、通常の5.1chが平面的に指向するサウンドに比べて、ドルビーアトモスはそれに縦の概念が入り、より3D的な響きに優れているそうな。うーん、いつか体験してみたい!

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この"The Future Bites"、気軽に1曲単位でキャッチーな楽曲を楽しむこともできるし、よりディープに楽曲のテーマやサウンドに浸ることもできる楽しみもあり、まんまとSWの術中にハマってしまったけど、毎回驚きを与えてくれる数少ないアーティストでもあるので、次はどんなアルバムを作るのだろう?と早くも次が楽しみだったりします。

THE FUTURE BITES
Steven Wilson 
Caroline International
2021-01-29


THE FUTURE BITES (Blu-Ray)
Steven Wilson 
Caroline International
2021-01-29


THE FUTURE BITES (Limited Red LP) [12 inch Analog]
Steven Wilson 
Caroline International
2021-01-29



 

【ライブレポ】STEVEN WILSON@EXシアター六本木 2018.11.6

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本来はMARILLIONDEF LEPPARDのライブレポを順番的に書かないといけないけど、いろいろあって、先にこの前行ったSTEVEN WILSONのライブレポを書きます。MARILLIONDEF LEPPARDの件はどこかで書くつもり・・・(書けるのか?w)

さて、STEVEN WILSON
PORCUPINE TREEで何度か来日公演を行っているけど、どれも集客的には厳しい状況だった模様。そのうちの一つである2006年のUDO MUSIC FESTIVALは自分もその場を見た人でもあるが、セカントステージ出演で観客は50人いたかな・・・ フェス自体も悲惨な集客模様ではあったが。私はメインステージに出演する復活ALICE IN CHAINSを見たくて途中で離脱しちゃったけど、スティーヴン、ごめん^^;
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↑は2006年UDO MUSIC FESTIVALの時の写真(^_^;)


そんな過去や日本での彼の評価は今ひとつ高くないこともあり、しばらく来日はなかったけど、今回はソロとしては初来日公演!今や、KING CRIMSONを始めとする大物プログレバンドやTEARS FOR FEARSといった80’sポップスの再発リミックス・リマスター、サラウンドミックス盤も非常に多く手掛けており、特に日本のプログレ界隈からの再び評価され始めている中でのこのタイミングの来日はなんとしても、一定の成功を納めてほしいところ!

ライブの話に前にもう少し、STEVEN WILSONについて書くけど、なんとなく彼はイメージとして音楽理論に精通した人と思っていたけど、こちらのSIGHの川嶋さんとのインタビューでは基本的に直感的に音楽を作るスポンティニアスな人ということでビックリ。他にも面白い内容満載なのでおすすめのインタビュー記事ですが、もう一つ印象的なのは彼はプログレという枠に囚われることを非常に嫌っているところ。去年リリースされた最新作"To The Bone"はその意思表示とも取れるサウンドが垣間見れるけど、さて、どんなライブになるのだろうか・・・。


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今回の来日メンバーは以下の通り。
スティーヴン・ウィルソン(ボーカル、ギター)
ニック・ベッグス(ベース)
クレイグ・ブランデル(ドラム)
アダム・ホルツマン(キーボード)
アレックス・ハッチングス(ギター)


ニック・ベッグスは元KAJAGOOGOOというよりはもはやスティーヴ・ハケットスティーヴン・ウィルソンお馴染みのベーシスト。クレイグ・ブランデルFROST*のドラマーでもありますね。
アダム・ホルツマンは80年代にマイルス・デイヴィスバンドでも活動していたベテラン。アレックス・ハッチングスは今まで聞いたことがなかったギタリストだけど、このメンツの中で下手は人は入れないはずだから、凄腕なんだろう!

私はEXシアター公演の二日目のみに行ってきたけど、初日ももし可能だったら行きたかった!と思うほど本当に素晴らしいライブだった。
席は前から2列目のニック・ベッグス側。EXシアターの椅子席はどれもフカフカなので、ずっと座っていてもお尻が痛くならない優しい仕様(笑)なんとなくプログレファンが多い客層からして、ずっと座ってみるのだろうか・・と思っていたが。


Truthという名のオープニング映像が流れ、メンバーがバラバラと登場。スティーヴンは髪が少し短くなっており、しかも一人だけ裸足だ!wライブは新譜からの"Nowhere Now"でスタート。途中の盛り上がるパートは立ち上がって手拍子を取りたくなるが、客の大半は座ったまま鑑賞。しかし、3曲目の"Home Invasion"からスティーヴンが前にグイグイと出てきて客を煽ってくる。これは立ち上がって応えないといけない!と皆が思ったのか観客の7〜8割は立ち上がり、以後はそのまま立ち上がって観ることに。


スティーヴンは日本でのライブでもMCはその辺はあまり気にせず長々と話すタイプらしい。
「昨日来てくれた人は手を上げて!」「今日初めて来た人はどれぐらい?」
「昨日の観客が僕の日本のファンの全てじゃないことがわかってよかったよ(笑)」

ってな感じのシニカルなやりとりもありつつ、今日はセトリを変える宣言が出て、前作の"Hand.Cannot.Erase"からの曲が前半の中心という展開に。

その中でハイライトはやはり、"Routine"でしょうねー!
初日には演らなかったし、ライブ映像作品でこの間リリースされたRoyal Albert Hallライブでもやらなかった曲。スティーヴンからは自分の曲の中で最も暗い曲と紹介があったけどw



この映像とライブの音とのマッチングがバッチリで、陰鬱だけどドラマティックに展開するところがライブだと更に圧巻!!スティーヴンのボーカルも表現力があって、実は歌も上手い人なんだなぁ・・。
思わず映像に目を惹きつけられてしまうが、演奏もちゃんと見たいので目を常に動かしていたから落ち着いて見れなかったw歌詞とリンクした映像だが、最後のオチはそうだったか・・・でも僅かながら希望を感じさせるエンディングと音がそこもマッチするので、更に好きな曲になった。あと、日本でも4chサラウンドシステムだった模様でSEなどはサラウンド効果で臨場感溢れる内容。ぜひ、他のアーティストもこのシステムは取り入れてほしい。

スティーヴン・ウィルソンは予想以上にステージで動き、客の煽りなどもかなり行うので、見た目とは裏腹にかなりロッカーな感じが意外だった。ただし、クネクネとする手の動きはキモいと言われることだけはある(笑)逆にかっこよさという点ではニック・ベッグスでお釣りが来るぐらいだから丁度いいのかもしれない。ニック・ベッグスは特に派手な動きはしないが、ちょっとした佇まいが非常に絵になる!あんなにかっこいいベーシストだったとは!もちろんトレードマークのチャップマンスティックも大活躍。

演奏面では個々のプレイヤーの素晴らしさは当然ながらもバンド全体のアンサンブルが非常にタイトでどの曲も心地良く聴ける。そんな中でも曲にはよってはギターソロを弾き、ボーカルでも存在感を見せるスティーヴンはミュージシャンとしても素晴らしいですね。今まではどちらかというとプロデューサーやミキシングエンジニアという目で見ていたので。。

1部だけでお腹満杯というほど、もの凄い充実感があったが、まだまだショウの半分!いやー、凄いライブを見ているもんだ。

1部と2部の間に15分ほどの休憩を挟み、2部は新譜"To The Bone"の曲とPORCUPINE TREE時代の曲を混ぜながらの構成。"The Same Asylum As Before"のコンパクトながらもキャッチーな歌メロにアヴァンギャルドな展開からメロウな構成に行く展開があるなど見どころ満載な曲から入り、次はPORCUPINE TREEの曲でもあるが、ソロでリメイクしている"Don't Hate Me"。アダム・ホルツマンのジャジーなテイストのキーボードソロが堪らない。

そして、スティーヴンによるポップミュージックとはTHE BEATLESABBA(ABBAのレコードを持ってきた客もいたw)であって、最近のポップミュージックはポップでは無い云々・・と長い説明が入って、彼の音楽の中で最もポップでキャッチーな"Permanating"へ。

「みんなこの曲では立って踊ってほしい」「あ、でもKING CRIMSONのTシャツを着ている人は座っててもいいよ」とここでも皮肉満載(笑)
この前後辺りからスティーヴンのMCも更に饒舌になり、「今日は会場に来る前にファンがホテルにいたから、サインや写真撮影をして、今日のライブは来るの?と聞いたら、KING CRIMSONのライブにお金を使い過ぎて行けないと言いやがった」「あいつはF●CK YOUだ!(笑)」「そんなあいつが羨むショウにしよう!(笑)」と絶好調wwいや、無理しても行くべきライブだったと思うから、その人はお楽しみを見逃したねw

ライブも終盤に入り、特に"Heartattack In A Layby"〜"Vermillioncore"は後半の圧巻パート!
"Vermillioncore"はニック・ベッグズのぶっといベースサウンドが強烈なグルーヴを生み、プログレメタル然とした展開ではヘッドバンガーも発生。


アンコールではスティーヴン一人によるPORCUPINE TREEナンバーの"Even Less"。大きなフォームでギターをかき鳴らし、オルタナっぽいダーティなサウンドは正にロッカーという感じ。ギターの切れ味も良いからギタリストとしても中々なんじゃないでしょうか。

続いて同じくPORCUPINE TREE"The Sound Of Muzak"。ここでは「歌詞を知っていたら一緒に歌ってほしい」「昨日は俺が間抜けに見えるほどだったから、今日は頑張ってほしい」「君たちに馴染みの薄い言語ではあるのは知っているけど、それは言い訳にならない」と手厳しいなーww私はこの曲は知っているけど、歌詞はそこまで覚えているわけじゃないので、最初のサビは必死になって単語を追っていましたww
同じように考えて人が多かったのかはわからないけど、この日は皆さんサビを歌っている人は多かったと思う。スティーヴンもご満悦だったかな?

そして、ライブの最後は「デイヴィッド・ギルモアのように僕にはヒット曲や必ずこの曲をライブでやらないといけない曲はないけど、その分自由に曲を選ぶことができる」「というわけで、いつもこの曲で最後を締めるのはレアなんだけど・・・」というMCがあり、どの曲が来るのかな・・?と思ったら新譜"To The Bone"の最後を締める"Song Of Unborn"だった。なるほど、この曲で締めるのか!子供を持つとこの曲の歌詞はちょっと胸に響くので、映像と相まって個人的にはとっても印象深い締めでよかっと思う。


というわけで、3時間弱の長いライブだったけど、長さは感じず逆にもっと聞きたい!という欲が更に出るライブだった。そういえば、この日は"Lazarus""Arriving Somewhere But Not Here"といった定番曲は演らなかったけど、それでもこれだけの満足感!!

最初は座ってじっくりと聴くライブかと思っていたら、こんなにも多幸感に溢れて楽しく踊りながら、エアギターやエアベースしながら見るライブだったので、確かにプログレという枠に収めちゃうのは無理があるなと実感。スティーヴンもその辺りは観客にも求めている節があったので(冗談も入っているけど)、ロックと名の付くものは自由かつやっぱり楽しくないとね!ということが言いたいのだろう。
会場の盛り上がりもよかったし、観客と積極的にコミュニケーションを取るスティーヴンの人柄に次の来日もそう遠くない未来にまたあると思う。「今回の来日は久しぶりだったから何を期待してわからなかったけど、これだけ僕の音楽を聞いている人たちが日本にもいることを知ってよかった」的な話をしていたので、PORCUPINE TREE時代の悲惨な日本の集客の思い出は今回の来日公演で上書きされてくれると良いな・・・。

ちなみにライブは撮影厳禁だったので写真はなし!
あと、MCはうろ覚えなんで、正確なものは求めないでください(笑)

Setlist

〜Set1〜

01.Nowhere Now
02.Pariah
03.Home Invasion
04.Regret #9
05.Routine
06.Hand.Cannot.Erase
07.Ancestral
08.Happy Returns
09.Ascendant Here On...

〜Set2〜

10.The Same Asylum As Before
11.Don't Hate Me (PORCUPINE TREE)
12.Pernamating
13.Song Of I
14.Heartattack In A Layby (PORCUPINE TREE)
15.Vermillioncore
16.Sleep Together (PORCUPINE TREE)

〜Encore〜

17.Even Less (PORCUPINE TREE)
18.The Sound Of Muzak (PORCUPINE TREE)
19.Song Of Unborn


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【レビュー】STEVEN WILSON "To The Bone"


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STEVEN WILSON
といえば、PORCUPINE TREE、ソロ作品で現代のプログレッシブロックシーンを引っ張る存在のアーティストだが、それだけはなく、KING CRIMSONを始め、数多くのプログレリイシュー作品でリマスター・リミックスを担当していることでも有名。最近はTEARS FOR FEARSなど、80年代ポップスのリミックス作品も手掛けているなど、活動の幅が更に広がっている模様。こういった経歴を踏まえて、現在進行系の音楽を作りつつ、なおかつ過去作品のリイシューを手掛けていることをしているので、私は彼を数少ないプログレ界において、現在と過去を見事に繋いでくれているアーティストだと思っている。そんなSTEVEN WILSONの最新ソロ作品は今までの作風とちょっとどころか、だいぶ違うらしいので、どんな変化があるのかとっても楽しみにしていた。

まず、一つ大きな違いを挙げるとすれば、レーベルが今まで所属していたKscopeからCarolineに移ったことでしょう。Caroline所属のアーティストを見ると、Kscopeとは全く違ったアーティストばかりで、ここにスティーヴン・ウィルソンが入るの?とビックリ。そしていきなり3曲もPVが作成され、この3曲は今までのスティーヴン・ウィルソンのカラーと異なる曲でコンテンポラリーといってもいい曲。

"Pariah"

女性ボーカリスト、Ninet Tayebとのデュエット曲。男女のデュエットと曲調からしてピーター・ガブリエルがケイト・ブッシュとのデュエット曲"Don't Give Up"が想起される。


"Permanating"

アルバムの中で最もポップかつダンサブルな曲でそのキャッチーさが一際目立つ。とにかく、耳に残る曲調と歌メロが個人的にドンピシャ!この曲は何回もリピートしても飽きない。ABBA"Mamma Mia"のオマージュのように聴こえるけど(笑)ボリウッドダンサーが沢山出てくるPVを見ていると思わず踊りたくなる。そして、ニコッ!と笑うスティーヴン・ウィルソンがこのPVのポイントw

"Song Of I"

モダンでダークな曲でSophie Hungerというシンガーとのデュエット曲。ダークな曲はスティーヴン・ウィルソンの曲で数多くあるが、この曲はSTORM CORROSIONを更に洗練させコンテンポラリーにした曲のよう。

アルバムを代表する今までとカラーが異なる曲を3つ挙げたが、アルバム全体通して聴くと、それほど今までのスティーヴン・ウィルソンの音楽と変わらない印象を受ける。そこで、"Raven That Refused To Sing"や前作の"Hand.Cannot.Erase"を改めて聴いてみると、サウンド面ではやっぱりカラーが変わっている。今作の"To The Bone"は音の輪郭が総じてマイルドな作りという印象でメタリックで尖ったパートは控え目。そういう意味では若干、取っ付き易いのかな?

もちろん、従来路線の曲もあるので、全体のバランスは取っている印象。ところどころインストで聴かせるパートもキッチリと抑えているので、セルアウトしたアルバムになっているわけでもない。"Nowhere Now"の中間部分のインストパートはグッ!と盛り上がるので最高!

"Nowhere Now"


"Detonation"

この"Detonation"は終盤のハイライト曲でもあるが、スティーヴン・ウィルソンの王道的な曲で今作で最も長い9分台の曲でDavid Kollarというの弾きまくるギターソロとスペイシーなバックが気持ちいい。アルバムの中で一番王道プログレ的な曲かもしれない。プログレしている曲は他にもあって、"The Same Asylum As Before"はエッジのある音と展開が豊富な曲調は安心するかも?w

というわけで、まとめると、サウンドは聴きやすい方向に舵を取りつつも、今まで培ってきた路線をキープしつつ、スティーヴン・ウィルソンが好きな80年代のポップス要素を入れて、新たな境地を迎えたアルバムと言えるかも。まあ、PINK FLOYDというか、デイヴィッド・ギルモアやロジャー・ウォーターズっぽいところは色濃く出ているところもあるので、そこは相変わらず好きだなぁ〜とニンマリするか、またそのパターン?とちょっと斜めに構えるかでちょっと印象は変わるかもしれない。
私?個人的にはとっても楽しんでいるアルバムだけど、もっと変化していると思ったので、そこはもっと変化してほしかった気持ちもあります。

話を最初に戻して、スティーヴン・ウィルソンはプログレ界において現在と過去を見事に繋いでくれているアーティストだと思っていると書いたけど、日本だとなんか人気がイマイチのような気がしてならない。。PORCUPINE TREEであのUdo Music Festivalの惨状が尾を引いてしまっているのか・・・。私はその場にいて最初の数曲は聴いてましたが、メインステージで新生ALICE IN CHAINSが気になってしまい、そっちに行ってしまったので説得力は無いかもしれないけど(爆)チッタさんとか呼んでくださいー!!!


トゥ・ザ・ボーン
スティーヴン・ウィルソン
Hostess Entertainment
2017-08-18

 
プロフィール

sekibow

熱苦しいハードロック、ヘヴィメタル、スラッシュメタル、ドゥーム・ストーナー系メタル、プログレ、そして70年代〜80年代のウエストコースト系ロックを愛するパフュメタラー。Sign of the Hammer Be My Guide

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