Heart Of Steel

買ったアルバムの感想を語る場

2017年08月

「メタルファンは、死ぬまでメタルファンなんだ。パーマネントに『あ~○○年の夏はSLAYERをよく聴いたよな~』みたいな聴き方をする奴は一人もいないよ」byロブ・ゾンビ

【レビュー】THE NIGHT FLIGHT ORCHESTRA "Amber Galactic"

IMG_4321

THE NIGHT FLIGHT ORCHESTRA(以下、TNFOと略)はSOILWORKのビョーン・ストリッド(ボーカル)とデイヴィッド・アンダーソン(ギター)、ARCH ENEMY/SPIRITUAL BEGGARSのシャーリー・ダンジェロ(ベース)、MEAN STREAKのヨナス・カールスバック(ドラム)、VON BENZOのリチャード・ラーソン(キーボード)がメンバーのバンドで、それにパーカッション・ギターでセバスティアン・フォルスルンドなるプレイヤーが参加している。
北欧のメロデス系、正統派ヘヴィメタル系バンドの面々が集まっての何をするのかと思ったら、80年代産業ロック系音楽をやるという異色バンドだった!よく、北欧エクストリームメタルやっていた連中が70年代型ハードロック系へレイドバックする例は多いけど、この TNFOは明確に80年代産業ロック系を志向しているところが非常にユニーク。

※↓↓は私の音楽趣向の話なんで読み飛ばしてください w
イギリス以外の欧州バンドでTOTOやJOURNEYに代表される産業ロック系を志向するバンドは数多く、私も昔は色々と聴いていたが、どれも最初はイイなと思いつつ、すぐに飽きてしまうのが多かった。中にはTOTOのメンバーが参加したものもあったが、やっぱりアルバムを最終的に手放してしまうものが多かった。TOTOやJOURNEYといった純アメリカ産バンドと何が違うのか?個人的には北欧バンドの多くはR&B、ファンク、ブルースといったルーツが感じられないものが多く、その辺のエッセンスの欠如が、物足りなさに拍車をかけているんだと思っている。あと、英語の発音。欧州特有の甘い発音は、産業ロック・AOR系だとマイナスに響いてしまうと考えていて、その発音の甘さがイモっぽい印象を与えるのだ。AOR系は洗練されていないと!が私の勝手な理想像w。
以上はあくまでも個人的な音楽趣向ということで、全ての欧州メロハー系バンドを知っているわけでも無いから、適当に受け流してください(笑)

というわけで、このTNFOも2ndアルバム"Skyline Whisper"が出た時はBurrn!誌のインタビューも載っていたので、一瞬、興味を持ったけど、前述の理由でスルーしてました(^O^;)
しかし、Sweeet RockでTNFOを聴く機会があり、私の偏った見方を崩してくれたセンスの良さにKO!前置きが長くなったけど、新譜"Amber Galactic"の国内盤発売が非常に待ち遠しかった。

単に産業ロックのキラキラした部分だけを抽出しただけでなく、背後にある様々な音楽的エッセンスをキチンと消化した上で、元々ヘヴィメタル畑のプレイヤーばかりということもあり、どうしても滲み出てしまうHR/HMカラーがこのバンドをユニークしている一因だと思う。その中で目立っているのはビョーンのボーカル。彼が大好きだと言っているルー・グラム、ジミ・ジャイミソンを彷彿とさせるようなパワーがあって伸びやかなボーカルはSOILWORKでは見られなかったもの。力んで歌うところはSOILWORKの時に近しい歌い方になってしまうのはご愛嬌といったところかw

とにかく、産業ロック・AORが大好きなんだ!という想いが凄く伝わるけど、それだけじゃなく、肝心のクォリティも素晴らしく、良い曲(ヒットソング)が沢山入っているアルバムであることがなによりも重要。
アルバムの1曲目"Midnight Flyer"はDEEP PURPLEのキーボードを80年代チックにした曲で、このアルバムの中では最もハードロックしている曲。ビョーンのボーカルもアルバム全体で見れば最も荒々しい。ところが、2曲目の"Star In Rio"は女性バックコーラスが入り、ここから産業ロックモードに突入。
そして、最初の盛り上がりを迎えるのが3曲目の"Gemini"。ファンク・ディスコテイストが入った軽快な曲で、歌メロも非常にキャッチー。ハードロック的カタルシスが入るギターソロも素晴らしい。 これは本当に良い曲!!


6曲目の"Domino"はまさしくTOTOな曲だが、TOTOのブラックなフィーリングをキチンと抑えているところが特に素晴らしい。ビョーンもこういった曲を見事に歌いこなしているし、彼は本当に幅広い歌唱力の持ち主ですねー。


 7曲目の"Josephine"は例えると・・・SURVIVORタイプの曲かな?SURVIVORに出てきそうな爽やかなギターソロまでキチンと抑えている(笑)

同じSURVIVORタイプの曲と言えば、9曲目の"Something Mysterious"もそう。この曲はまるでSURVIVORの"Burning Heart "のような曲だけどねww

全編、彼らが産業ロック系を愛していて、それに対するセンスの良さを非常に感じたけど、それにトドメをさすがのミック・ジャガーのカバーで"Just Another Night "
このカバーがポイントで、スタジオアルバムバージョンのカバーでなく、LIVE AIDにミック・ジャガーがソロで出演した際のライブバージョンを元にしたカバーであるところに、思わず、「そうそう、そのバージョンを待っていたんだよ!」と心の中で叫んでしまったww
"Just Another Night "は良い曲だが、勢いがあって、アップテンポなLIVE AIDバージョンを先に見てしまったため、後に聴いたスタジオアルバムバージョンはとっても物足りないと個人的に思っていた。Burrn!のインタビューを読むとビョーンも同じような感想を持っていたようなんで妙なシンパシーを感じちゃうな(笑) 

THE NIGHT FLIGHT ORCHESTRA版"Just Another Night "
ほぼ完コピ具合が微笑ましいし、ビョーンのボーカルもお見事!サックスもちゃんと入っている。


こちらが本家ミック・ジャガーがLIVE AIDにソロで出演した際の"Just Another Night "
バックはHALL&OATESの面々なんだよねー。個人的にLIVE AIDのDVDはミックのソロからストーンズ、HALL&OATESなどなど、再発見したアーティストが非常に多かったので、とっても重要なDVD。


"Amber Galactic"を購入した後にTNFOの2ndアルバム"Skyline Whisper "も買ったけど、 まだ70年型ハードロックな曲も多く、方向性をまだ探っているように思えたが、"Amber Galactic "は明確に産業ロック系を目指す方向にかじを切っており、バンドとして目指すところの焦点は定まったかな?ビョーンやシャーリーなどワールドワイドに活躍しているメンバーがいるから、この手のバンドで音楽性がイモっぽいところが皆無だし、アレンジやバランス感覚もセンスの良さを感じる!逆にセンスが無いのはアルバムのアートワークか〜?(苦笑) 
ザ・ナイト・フライト・オーケストラ
キングレコード
2015-05-27


ライブ活動が増え始めたせいか、欧州では徐々に人気が出ているようだけど、日本だとどうでしょうか。個人的には人気が出てほしいが、AOR好きな方にはメタルアーティストでしょ?という偏見で見られる、逆にメタル好きにはAOR系なんでしょ?ちょっと興味無いなぁ・・と距離を取られてしまう。この狭間に入ってしまう可能性が高いのが心配。
個産業ロック好きにはオススメしたいバンドなんで、元々のアーティストがあーだこーだでなく、まずは先入観無しで音に向き合ってほしいな。



 

【レビュー】DONALD FAGEN "Morph The Cat"(CD+DVD-Audio盤)

今年の9月に横浜赤レンガでで開催されるBlue Note Jazz Festivalにドナルド・フェイゲンがトリとして出演するので、行こうかどうか迷っているけど、彼のソロはそういや、"The Nightfly""Sunken Condos"しか持っていないから他も聴いておかないと・・・ということで色々と探していた。

彼が2006年にリリースしたソロ三作目の"Morph The Cat"は通常盤CDの他に5.1chサラウンドが収録されたDVD-Audio盤もあるので、それは某塔店のオンラインでオーダーしていたけど、2ヶ月以上待っても入荷の気配は無く、終いにはキャンセルされてしまう始末。中古でも探していたけど、通常盤CDしか無いし、もうDVD-Audio同梱盤は諦めようかな〜と思っていたら先日の大阪出張の時にユニオンを覗いたら、発見!!しかも、コンディション良好で値段もそこそこ安かったので、これはゲットするしかないでしょう(笑)

ということで、DONALD FAGENの "Morph The Cat"(CD+DVD-Audio盤)だが、通常盤ジャケと比べて5.1 SURROUNDED SOUND MUSICという文字が入って、ジャケも全体的に歪んでいるアレンジがされている。
IMG_4291



 ↓は通常盤のジャケ
Morph the Cat
Donald Fagen
Reprise / Wea
2006-03-07


1曲目の"Morph The Cat"でいきなり、重たく地を這うようなベースサウンドと派手さは全くないが非常にタイトなリズムを刻むドラムサウンドで幕を開ける。



そしてこの派手さは無いが、妙に自己主張を感じるリズムセクションがこのアルバム通じての肝だと思う。全身全霊、ひたすらビートを刻むことに集中しているかのようなサウンドは一番耳を持っていかれるし、誰がリズム隊なのかなー?と思ったら、そのドラムは現STEELY DANのドラムでもあるキース・カーロック(この人はいつになったらTOTOの正式メンバーとなるのだろうか?w)で、ベースはフレディ・ワシントン。この人も現STEELY DANのツアーメンバーですね。逆にギターはクレジットを見ただけでも6人レコーディングに参加しているのに、リズム隊はほぼ固定という内容、そして、そのリズム隊は現STEELY DANのツアーメンバーというのはちょっと面白いかも。

そんなリズム隊がドッシリと構えて、そこに何重のサウンドを重ねた都会的でオシャレかつひねくれたサウンドがこのアルバムの特徴。暗いサウンドまでといかないけど、都会のダークサイドをほのかに感じさせるところはSTEELY DANの"The Royal Scam"を彷彿とさせるかもしれない。"Morph The Cat"の方がもっとヘヴィな印象を与えてくれるけど。

アルバム1周目の時は全体的に淡々としていて、ちょっと地味かな・・と思ったが何回か聴いていくうちにスルメになるアルバム。わかりやすさで言えばソロ1作目の"The Nightfly"に軍配が上がるけど、この"Morph The Cat"の方が繰り返し聴きたくなるなぁ〜。

さて、肝心のDVD-Audio盤に収録されている5.1chサラウンドは96kHz/24-bitなんで、音自体も素晴らしい。元々録音状態は大変良いアルバムだけど、キース・カーロックとフレディ・ワシントンのリズム隊の音の重さはDVD-Audio盤だと更に迫力があるので、DVD-Audio盤を聴いてしまうと、通常CD盤が物足りなくなる(笑)
コーラス隊やホーンセクションはリアスピーカーに配置されている構成で、重ねたギターサウンドもサラウンドだと分離が更に良く聴こえ、正統派なサラウンド作り。このDVD-Audio盤はグラミーのBest Surround Sound Albumを受賞したようですね。5.1chだとサウンド全体的にグルーヴ感が増して、ノリが更に良く聴こえる印象。特に"H Gang"はパッと目の前の視界が開く印象で、思わず、「オオッ」と漏らしてしまうぐらい。


DVD-Audio再生時にはスクリーンには各曲毎のイメージ映像が流れるけど、やっぱり都会の暗い情景がこのアルバムにはとっても似合う。うーん、野外でDonald Fagenの曲やSTEELY DANの曲を聴いたらさぞ、気持ちいいだろうな〜、Blue Note Jazz Festivalに行っちゃうかーw

IMG_4318



Morph the Cat (W/Dvd) (Spec)
Donald Fagen
Reprise / Wea
2006-03-20





 
プロフィール

sekibow

熱苦しいハードロック、ヘヴィメタル、スラッシュメタル、ドゥーム・ストーナー系メタル、プログレ、そして70年代〜80年代のウエストコースト系ロックを愛するパフュメタラー。Sign of the Hammer Be My Guide

  • ライブドアブログ